家康は、赤坂の陣所で三成との決戦の時を迎えようとしていました。
【どうする家康】第43話 あらすじ
秀忠率いる本軍が真田の罠にはまってしまい、いまだ来ない。
圧倒的に数で劣る家康は、野戦での勝負を決断する。
決戦の地は関ケ原_
本軍なき進軍
総大将の毛利輝元は、秀頼を戦に出す覚悟ができている茶々をのらりくらりと交わし、大坂城にいすわっています。
岐阜城から駆け付けた福島正則は、さっさと攻め込もうと意気込むが、直政が殿に進言します。
…殿、秀忠様のご本軍が来るのを待つのがよいかと。
秀忠は無我夢中で馬を走らせているが、戦には到底間に合いません。
本軍がいまだ到着せぬは敵も同じ。万が一、毛利勢が秀頼様を頂いて敵三成勢に加われば、この戦危ういですぞ。
家康としては、なんとしてもその前に決着をつけたいのです。
調略を任せた黒田長政は、すでに内応を約束している吉川広家を通じて、小早川秀秋と毛利輝元に調略をくり返しているが、蓋を開けてみるまでどうなるかわからないという。
…秀忠は諦める。大垣城を、放っていく。
関ケ原には、大谷刑部がいるだけ。
家康率いる東軍が西に進めば、三成たちは城を出て来ざるを得ないので野戦に持ち込めます。
かつて三方ヶ原の戦いで信玄にやられて痛い目にあった戦法を用いようというのです。
されど、後ろを三成に塞がれ、小早川や大坂からの軍勢が敵に加われば、われらは袋のねずみ…
それが三成の狙いであろう。だが、大軍勢を率いるとは思いどおりにゆかぬもの。
家康と三成、どちらが人の心をつかむか、勝負はそこで決まるのです。
すると突然、雨が激しく降りだし雷鳴がとどろきます。
くしくも、40年前織田軍が取り囲む大高城に兵糧を運び込んだ時と同じ空模様。
あれもまた、一門の命運と皆の命を懸けた日だったのです。
決戦の地、関ヶ原へ。
いざ、出陣!
その夜、赤坂の陣を出た徳川軍が、雨の中をゆっくりと西に動き始めました。
不利な布陣
引用元 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
すぐに、大垣城のすべての軍勢も、城を出て西に向かいます。
先回りして関ケ原で迎え撃つつもりです。
夜が明けると雨は上がり、平原は深い霧に包まれていました。
慶長5年9月15日、両陣合わせて15万の兵が関ヶ原に集結しました。
家康は桃配山に布陣。
背後には天下無双の平八郎が守り、前線の平野には最強軍団赤備えを率いる井伊の赤鬼・直政が。
この二人のほかにも、福島正則、藤堂高虎、黒田長政らの歴戦の猛者たちが名を連ねます。
対する西軍の三成は、笹尾山に布陣。
周囲には嶋左近、薩摩の島津義弘が、さらに天満山には宇喜多秀家と小西行長の主力部隊、その南に刑部が陣を敷きます。
松尾山では、大軍率いる小早川が布陣します。
また、桃配山の背後にある南宮山には、吉川率いる毛利勢に土佐の長宗我部がいます。
三成勢は、徳川勢をぐるりと取り囲む布陣に成功したのです。
圧倒的不利な布陣にも、不思議と家康の気分は悪くないのでした。
わしは感じるぞ!先に逝った者たち…今は遠くにおる者たち…その皆の心がここに集まっていると。
家康の心のように霧が晴れてきます。
では行くかの、直政。福島殿が先陣を切るといきまいておるぞ。
先陣は徳川でなければならぬ!この井伊直政にお任せを!
では直政、先陣を任せる。思う存分、暴れてまいれ!
鍵握る小早川秀秋
各地で激しい戦闘が始まり、地の利を活かした西軍が優位に進めていました。
しかし、松尾山の小早川はいまだ動く様子がありません。
吉川が家康の背後を突けば小早川も動くだろう。
しかし、吉川率いる毛利勢は腹ごしらえをしていると言い一向に動きません。
それゆえその後ろに陣取る長宗我部も動けないでいるのです。
家康は冷静にこの戦況を見ています。
…前へ出る…敵に時を与えてはならぬ。今このとき、一気に勝負をかける!行くぞ!
おおー!
家康軍が進軍すると、敵は総がかりで攻めてきます。
三成たちは、まさか総大将の家康が戦場のど真ん中に出てくるとは思ってもいなかったのです。
おかげで敵はひるみ、味方は士気が上がっております。
家康が松尾山を見上げ言います。
…決断するときぞ、小早川。
ついに決断した小早川の大軍勢が、一気に山を駆け下り大谷刑部の陣に攻めかかっていきました。
阿茶VS茶々
寧々に頼み、茶々に目通りをすることが叶った阿茶。
毛利に見つかったら捕まるかもしれないと忠告をする茶々ですが、阿茶は命を断つ覚悟だと正面を見据えて言います。
秀頼様におかれましては、この戦におかかわりにならぬがよろしいかと。
徳川の調略はすすんでおり、すでに決着はつく頃だと言うのです。
我が殿は信用できるお方。…どうぞお身を徳川にお預けくださいませ。
顔色の変わる茶々です。
それは過ぎたるもの言いじゃ。身のほどをわきまえよ!
まことに不愉快なおなごよ。二度とお見えにならぬがよろしい。
帰り道には気をつけよと脅しをかける茶々です。
戦なき世で出会えたら…
平八郎は最後までかすり傷一つ負わなかったが、直政は徳川本陣の前を敗走していく島津勢を深追いし、腕に銃創を負ってしまいました。
殿…ついにやりましたな。天下をとりましたな…これから先が楽しみじゃ。
井伊の赤鬼と言われるまでの将になったというのに、無鉄砲なところは小姓の頃から少しも変わらぬ直政です。
こうして関ケ原の戦いは、死者八千人以上を出して終結しました。
総大将でありながら大坂城を動かなかった毛利輝元はじめ、西軍についた各大名には、減封、配流、蟄居、そして斬首など、それぞれに仕置きがなされました。
戦場を離れた三成は、伊吹山に逃れたのち伊香郡古橋村にて捕縛されます。
関ケ原の戦いから八日後、近江・大津城で家康と対面しました。
…戦なき世で出会いたかった。さすれば無二の友となれたはず。
やつれてはいるが、三成に敗者の卑屈さはなく、堂々としていて誇り高くすらありました。
これは豊臣の天下のためになしたること。その志、今もってみじんも揺らいでおりませぬ。
何がそなたを変えた?…これから共に戦なき世を作っていくものと思うておった。…なぜこのような無益な戦を引き起こした?
思い上がりも甚だしい。私は変わっておりませぬ。この私の内にも戦乱を求むる心が確かにあっただけのこと。…それは誰の心にもある。ご自分にないとお思いか?うぬぼれるな!この悲惨な戦を引き起こしたのは私でありあなただ。…戦なき世など成せぬ。まやかしの夢を語るな!
しばらく間をおいたのち、家康は口を開きます。
それでも、わしはやらねばならぬ。
同年10月1日、石田三成、京の六条河原にて斬首。
享年41でした。
つづく…
【どうする家康】第43話 感想考察
「関ケ原の戦い」
おそらく日本の歴史で一番有名な戦が関ヶ原の戦いでしょう。
総勢15万もの軍勢が集いし大戦です。
これまでの映画やドラマで何度も扱われたものですが、今回の「関ヶ原の戦い」ほど、終始冷静で感情の起伏がない家康はなかったのではないでしょうか。
ある意味虚無感さえ漂っているようでした。
ここに来るまでどれだけの戦を戦い、どれほどの家臣や大切な人を失ってきたか。
戦上手の徳川軍と言われてますが、通ってきた道がどんだけ荊棘だらけだったか…
汗も涙も泥水も飲んできた家康です。
三成ごときに負けるはずがないのです。
しかし家康からは、今こそ天下を取る時といったようなほとばしる熱量みたいなものはまったく感じられません。
それは三成との対面でも言っていたように、無益な戦だと思っていたからでしょう。
寧々が言っていたようにこの戦は豊臣家中のケンカ、言わば内輪もめです。
そんなケンカで八千以上もの死者を出してしまったことへの無念さえ感じます。
共に戦なき世を作る夢を抱いていると思っていた三成が相手だからこそ、余計にこの戦の意味がわからなくなってしまったのではないでしょうか。
三成は戦なき世などまやかしの夢だと言っていたけど、確かにその夢は抱いていたのだと思います。
しかし、己の損得でしか動かない多くの武将たちに裏切られ、敗者となってしまった現実を見て悔しくて出た言葉ではないでしょうか。
その言葉に対し少し間を置き、家康は「それでも、わしはやらねばならぬ」と答えます。
まやかしと言われようが、成せるわけがないとバカにされようが、狸とののしられようが、それは瀬名に誓ったことだからです。
瀬名と信康が命をかけて成し遂げようとした「戦なき世」のためだからです。
本来戦など好きではない家康が多くの死者を出してしまうような大戦に挑んだのは、信長や秀吉が望んだ「天下人」となるためではありません。
瀬名と信康に戦なき世を作ると誓ったからなのです。
星を見ながら夢を語り合った三成さえ挙兵をしたのです。
自分が頂点に立たなければ、戦なき世は作れぬとさらに腹を括ったことでしょう。
そのために、通らなければならない戦となったのです。
それでもやらねばならぬと言った言葉の裏には、まだこれからもやらなければならないという意味も含まれていると思います。
家康は戦の裏に茶々がいることを知っているからです。
秀頼を前面に出してくる茶々に対しては、慎重にならなければならないでしょう。
家康は、まだ七つの秀頼がのちのち脅威になることはわかっているはずです。
三成などよりはるかに厄介な者となることを…
なんせ上方での豊臣人気はいまだ顕在なのですから。
それゆえあの「間」があったのかもしれません。
家康本軍が出てきて闘志を燃やす三成と静を貫く家康の対称的な描写は、力強い合戦場面を描くよりも鋭い心理合戦を表していてゾクゾクするほど見応え十分でした。
合戦シーンは勇猛武将の華麗な戦いを描くのではなく、死にゆく者たちや戦の悲惨さのみにスポットをあて戦の無益さを表し、それを見下ろす二人の心の内面が痛いほどわかり、素晴らしい演出でした。
今回は、茶々の恐ろしさや阿茶の有能な交渉人となりうる伏線、直政の死へのフラグ、秀忠遅参、かつてないほどの小早川秀秋の狡猾さや凛々しさなど盛りだくさんでしたが、やはり家康と三成のシーンが強烈すぎて、二人に絞っての感想考察となりました。
石田三成という人間は、きっと寸分違わずこういう人だったんだろうなと思わせてくれる七之助さんの治部石田三成。最高でした!
七之助さんで石田三成主人公のドラマが見たいものです☺️
(石田三成主人公ドラマでかつて加藤剛さんが三成役だった作品が良かったんだよなぁ…懐かしの大型時代劇みたいな感じで再放送してくれないかしら…と思っていたらU –NEXTにありました😃)
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